第五章
0501>イエスは群衆を見て、山に登り、座につかれると、弟子たちがみもとに近寄っ
てきた。
0502>そこでイエスは口を開き、彼らに教えて言われた。
0503>「こころ貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
0504>悲しんでいる人たちはさいわいである、彼らは慰められるであろう。
0505>柔和な人たちは、さいわいである、彼らは地を受けつぐであろう。
0506>義に飢えかわいている人たちは、さいわいである、彼らは飽き足りるようにな
るであろう。
0507>あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。
0508>心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。
0509>平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろ
う。
0510>義のために迫害された人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
0511>わたしのために人々があなたがたをののしり、また迫害し、あなたがたに対し
偽りの様々な悪口を言う時には、あなたがたは、さいわいである。
0512>喜び、よろこべ、天においてあなたがたの受ける報いは大きい。あなたがたよ
り前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。
0513>あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってそ
の味を取りもどせようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々
にふみつれられるだけである。
0514>あなたがたは、世の光である、。山の上にある町は隠れることができない。
0515>また、あかりをつけて、それを升の下におく者はいない。むしろ燭台の上にお
いて、家の中のすべてのものを照らさせるのである。
0516>そのように、あなたがたの光を人々の前に輝やかし、そして、人々があなたが
たのよいおこないを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。
0517>わたしが律法や預言者を廃するためにきた、と思ってはならない。廃するため
ではなく、成就するためにきたのである。
0518>よく言っておく。天地が滅び行くまでは、律法の一点、一画もすたることはな
く、ことごとく全うされるのである。
0519>それだから、これらの最も小さいいましめ一つでも破り、またそうするように
人々に教えたりするものは、天国で最も小さい者と呼ばれるであろう。しかし、これ
をおこないまたそう教える者は、天国で大いなる者と呼ばれるであろう。
0520>わたしは言っておく。あなたがたの義が立法学者やパリサイ人の義にまさって
いなければ、決して天国に、はいることはできない。
0521>「昔の人々に『殺すな。殺す者は裁判を受けなければならない』と言われてい
たことは、あなたがたの聞いているところである。
0522>しかし、わたしはあなたがたに言う。兄弟に対して怒る者は、だれでも裁判を
受けなけねばならない。兄弟にむかって愚か者と言う者は、議会に引きわたされるで
あろう。また、ばか者と言う者は、地獄の火に投げ込まれるであろう。
0523>だから、祭壇に供え物をささげうとする場合、兄弟が自分に対して何かうらみ
をいだいていることを、そこで思い出したなら、
0524>その供え物を祭壇の前に残しておき、まず行ってその兄弟と和解し、それから
帰ってきて、供え物をささげることにしなさい。
0525>あなたを訴える者と一緒に道を行く時には、その途中で早く仲直りしなさい。
そうしないと、その訴える者はあなたを裁判官にわたし、裁判官は下役にわたし、そ
して、あなたは獄に入れられるであろう。
0526>よくあなたに言っておく。最後の一ゴドラントを支払ってしまうまでは、決し
てそこから出てくることはできない。
0527>『姦淫するな』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである
。
0528>しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、情欲をいだいて女を見る者は
、心の中ですでに姦淫をしたのである。
0529>もしあなたの右の目が罪を犯させるのなら、それを抜き出して捨てなさい。五
体の一部を失っても、全身が地獄に投げ入れない方が、あなたにとって益である。
0530>もしあなたの右の手が罪を犯させるのなら、それを切って捨てなさい、五体の
一部を失っても、全身が地獄に落ち込まない方が、あなたにとって益である。
0531>また『妻を出す者は離縁状を渡せ』と言われている。
0532>しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、不品行以外の理由で自分の妻
を出す者は、、姦淫を行わせるのである。また出された女をめとる者も、姦淫を行う
のである。
0533>また昔の人々に『いつわり誓うな、誓ったことは、すべて主に対して果せ』と
言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
0534>しかし、わたしはあなたがたに言う。いっさい誓ってはならない。天をさして
誓うな。そこは神の御座であるから。
0535>また地をさして誓うな。そこは神の足台であるから。またエルサレムをさして
誓うな。それは『大王の都』であるから。
0536>また自分の頭をさして誓うな。あなたは髪の毛一すじさえ、白くも黒くもする
ことができない。
0537>あなたがたの言葉は、だだ、しかり、しかり、否、否、であるべきだ。それ以
上に出ることは、悪から来るのである。
0538>『目には目を、歯には歯を』と言われていたことは、あなたがたの聞いている
ところである。
0539>しかし、わたしはあなたがたに言う。悪人に手向かうな、もし、だれかがあな
たの右の頬を打つなら、ほかの頬おも向けてやりなさい。
0540>あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着も与えなさい。
0541>もし、だれかが、あなたをしいて一マイル行かせようとするなら、その人と共
に二マイル行きなさい。
0542>求めようとする者に与え、借りようとする者を断るな。
0543>『隣人を愛し、適を憎め』と言われていたことは、あなたがたの聞いていると
ころである。
0544>しかし、わたしはあなたがたに言う。適を愛し、迫害する者のために祈れ。
0545>こうして、天にいますあなたがたの父と子となるためである。天の父は、悪い
者の上にも良い者の上にも、太陽をのぼらせ、正しい者にも正しくない者にも、雨を
降らして下さるからである。
0546>あなたがたは自分を愛する者を愛したからとて、なんの報いがあろうか。その
ようなことは取税人でもするではないか。
0547>兄弟だけにあいさつしたからとて、なんのすくれた事をしているだろうか。そ
のようなことは異邦人でもしているではないか。
0548>それだから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全
な者となりなさい。
第六章
0601>自分の義を、見られるために人の前で行わないように、注意しなさい。もし、
そうしないと、天にいますあなたの父から報いを受けることがないであろう。
0602>だから、施しをする時には、偽善者たちが人にほめられるため会堂や町の中で
するように、自分の前でラッパを吹きならすな。よく言っておくが、彼らはその報い
を受けてしまっている。
0603>あなたは施しをする場合、右の手のしていることを左の手に知らせるな。
0604>それは、あなたのする施しが隠れているためである。すると、隠れた事を見て
おられるあなたの父は、報いてくださるであろう。
0605>また祈る時には、偽善者たちのようにするな。彼らは人に見せようとして、会
堂や大通りのつじに立って祈ることを好む。よく言っておくが、彼らはその報いを受
けてしまっている。
0606>あなたは祈る時には、自分のへやにはいり、戸を閉じて、隠れた所においでに
なるあなたの父に祈りなさい。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報い
てくださるであろう。
0607>また、祈る場合、異邦人のように、くどくど祈るな。彼らは言葉かずが多けれ
ば、聞きいれられるものと思っている。
0608>だから、彼らのまねをするな。あなたがたの父なる神は、求めない先から、あ
なたがたの必要なものはご存知なのである。
0609>だから、あながたはこう祈りなさい、天にいますわれらの父よ、御名をあがめ
られますように、
0610>御国がきますように、みこころが天に行われるとおり、地にも行われますよう
に。
0611>わたしたちの日ごとの食物を、きょうもお与えください。
0612>わたしたちに負債のある者をゆるしましたように、わたしたちの負債をおゆる
しください。
0613>わたしたちを試みに会わせないで、悪き者からお救いください。
0614>もしも、あなたがたが、人々のあやまちをゆるすならば、あなたがたの天の父
も、あなたがたをゆるして下さるであろう。
0615>もし人をゆるさないならば、あなたがたの父も、あなたがたのあやまちをゆる
して下さらないであろう。
0616>また、断食をする時には、偽善者がするように、陰気な顔つきをするな。彼ら
は断食をしていることを人に見せようとして、自分の顔を見苦しくするのである。よ
く言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
0617>あなたがたは断食をする時には、自分の頭に油を塗り、顔を洗いなさい。
0618>それは断食をしていることが人に知れないで、隠れたところにおいでになるあ
なたの父に知られるためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報
いて下さるであろう。
0619>あなたがたは自分のために、虫が食い、さびがつき、また、盗人らが押し入っ
て盗み出すような地上に、宝をたくわえてはならない。
0620>むしろ自分のため、虫も食わさず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って
盗み出すことのない天に、宝をたくわえなさい。
0621>あなたの宝のある所には、心もあるからである。
0622>目はからだのあかりである。だから、あなたの目が澄んでおれば、全身も明る
いだろう。
0623> しかし、あなたの目が悪ければ、全身も暗いだろう。だから、もしあなたの内
なる光が暗ければ、その暗さは、どんなであろう。
2064>だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し
、あるいは、一方を親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富と
に兼ね仕えることはできない。
0625>それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようか、何を飲もうかと、自
分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分の体のことで思いわずらうな。命
は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。
0626>空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取り入れることもし
ない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養って下さる。あなたがたは彼らよ
りも、はるかにすぐれた者ではないか。
0627>あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも
延ばすことができようか。
0628>また、なぜ、着物のことて思いわずらうのか。野の花がどうして育っているか
、考えて見るがよい。働きもせず、紡ぎもしない。
0629>しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花一
つほどにも着飾ってはいなかった。
0630>きょうは生えていて、あすは炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのよう
に装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろう
か。ああ、信仰の薄い者たちよ。
0631>だから、何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思い
わずらうな。これらのものはみな、異邦人が切に求めているものである。あなたがた
の天の父は、
0632>これらのものが、ことごとくあなたがに必要であることをご存知である。
0633>まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添
え与えられるであろう。
0634>だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自信が思いわずら
うであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。
第七章
0701>人をさばくな、自分がさばかれないためである。
0702>あなたがたがさばくそのそばきで、自分もさばかれ、あなたがたの量るそのは
かりで、自分にも量りを与えられるであろう。
0703>なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。
0704>自分の目には梁があるのに、どうして兄弟にむかって、あなたの目からちりを
取らせてください、と言えようか。
0705>偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい。そうすれば、はっきの見
えるようになって、兄弟の目からちりをとりのけることができるだろう。
0706>聖なるものを犬にやるな。また真珠を豚に投げてやるな。おそらく彼らはそれ
を足で踏みつけ、向きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。
0707>求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見いだすであ
ろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。す
0708>べて求める者は得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからで
ある。
0709>あなたがたのうちで、自分の子がパンを求めるのに、石を与える者があろうか
。
0710>魚を求めるのに、へびを与える者があろうか。
0711>このように、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供には、良い贈り物を
することを知っているとすれば、天にいますあなたがたの父はなおさら、求めてくる
者に良いもの下さらないことがあろうか。
0712>だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせ
よ。これが律法であり預言者である。
0713>狭い門からはいれ、滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこか
ら入っていく者は多い。
0714>命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見いだす者が少ない。
0715>にせ預言者を警戒せよ。彼らは、羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、
その内側は強欲なおおかみである。
0716>あなたがたは、その実によって彼らを見わけるであろう。茨からぶどうを、あ
ざみからいちじくを集める者があろうか。
0717>そのように、すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。
0718>良い木が悪い実をならせることはないし、悪い木が良い実をならせることはで
きない。
0719>良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれる。
0720>このように、あなたがたはその実によって彼らを見わけるのである。
0721>わたしにむかって『主よ、主よ』と言う者が、みな天国にはいるのではなく、
ただ、天にいますわが父の御旨を行う者だけが、はいるのである。
0722>その日には、多くの者が、私にむかって『主よ、主よ、わたしたちはあなたの
名によって預言したではありませんか。また、あなたの名によって悪霊を追い出し、
あなたの名によって多くの力あるわざを行ったではありませんか』と言うであろう。
0723>そのとき、わたしは彼らにはっきり、こう言おう、『あなたがたを全く知らな
い。不法を働く者どもよ、行ってしまえ』。
0724>それで、わたしのこれらの言葉を聞いて行うものを、岩の上に自分の家を建て
た賢い人に比べることができよう。
0725>雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけても、倒れることは
ない。岩を土台としているからである。
0726>また、わたしのこれらの言葉を聞いても行わない者を、砂の上に自分の家を建
てた愚かな人に比べることができよう。
0727>雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまう
。そしてその倒れ方はひどいのである」。
0728>イエスがこれらの言を語り終えられると、群衆はその教えにひどく驚いた。そ
れは律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。