クロムウエル


 CROMWELL, OLIVER (1599-1658)

矢内原の評価

デモクラシーの基礎は人民の自由にあり、そして人間の自由は根底においてたましいの自由にあるとすれば、クロムウエルこそイギリスの政治に人民の自由を確立した最初の政治家であり、しかも彼は最も深い意味において自由を理解した政治家でありました。彼を導いた原理は政治的というよりも、むしろ宗教的でした。彼は政治的自由よりも宗教的自由をより根本と考えました。政治的自由は多く便宜の問題です。したがって相対的です。しかし宗教的自由は絶対的です。 ・・・ クロムウエルは善は善、悪は悪として断固主張する政治家でした。彼によってイギリスの民主主義的政治の基礎は確立されたのであります。彼の政府は当時の客観的情勢上やむをえずプロテクターの独裁的形態をとりましたが、彼の精神はあくまで民主的でありました。彼の混じりない強い信仰と鉄腕の実行力とにより自由の精神は始めて強くイギリスの政治を貫いたのであり、それは後の時代に永続するえいきょうを残しました。近代イギリスはクロムウエルに始まるといってもよいのであります。

(全集24:295-6)