リンカーン


LINCOLN, ABRAHAM (1809-1865)

『第二回大統領就任演説』

もし250年間の報われなかったどれいの労働によって積み上げられた富がすべて消え、ムチによって流した血のすべてが今剣によって流される血によって償われるまで、この戦争の続くことが神の意思であっても、3000年前と同じく、今日もなお「主の審きは真実ですべてが正しい」と言わなければなりません。

だれに対しても悪意を抱かず、すべての人に対して愛をもち、神が私たちに示したその正義の確信によって、私たちが今取り組んでいる課題を成し遂げるため努力しようではありませんか。国の傷を医やし、戦争に従軍した人とそのやもめとみなし子を助け、私たちの間とそしてすべての国の間に正しくそして永続する平和を建設し守るためにすべての努力をつくそうではありませんか。

矢内原の解説

これはゲテティスバーグ演説と共に、リンカーンの二大演説に数えられる演説です。彼はここで政治家というよりも、預言者のごとく語りました。南北戦争は始めだれも予想しなかった大戦争になり、だれも予想しなかったどれい制度の全廃という大結果をもたらしました。そこにリンカーンは南北両軍の意図を越えた、神の働きを認めました。・・・ およそ戦争指揮の責任者としてこれ以上の高い精神を持つことは何人にも期待しがたいところです。この演説一つだけをもって、リンカーンの名は永久に記憶される価値があると思います。

(全集24:129)