新渡戸稲造


INAZO NITOBE (1862-1933)

宗教とは何か

 宗教とは神に接して力を得、これを消化し、同化して現す力である。朝夕の祈りにおいて神に近づき、神に交わり、神の力を心に実験して、これを身に現すようにするのが何より大切である。宗教を研究するとは、実行によってするほかはない。

矢内原の解説

 宗教と言うのは学問でもなければ理屈でもありません。また感情でもなければ単なる意志の力でもありません。宗教というのは神に接して、神の力を受けて、これを自分に同化して自分の身に現すことです。その方法は祈りということです。黙思ということです。黙思によって神と交わり神に接し神の力を得てこれを自己のみに現します。自己のみに現すということは、自分が実行するということであります。宗教を研究する方法は実行です。もっと詳しく言えば、黙思と実行、祈りと生活です。これが新渡戸先生の見られた宗教観です。・・・ 新渡戸先生の宗教の特色の一つは神秘的とでもいいますか、黙思を重んずると言うことであります。・・・ もう一つの先生のお考えの特色は、宗教は実際的なもの、実行的なものと言うことです。神と交わるという神秘的経験が、生活においてはきわめて実際的な実行力となって現われたのです。

(全集24:409-10)