受胎告知(じゅたいこくち)は中世画家の好んで描いた画題の一つです。私はフィレンツェの聖マルコ美術館で、フラ・アンジェリコ作の『受胎告知』を見たときの感動を、今もなお忘れません。敬虔(けいけん)と真摯(しんし)、温雅(おんが)と恩恵に満ちた天使ガブリエルの視線が、うぶで純真な乙女マリアの、心いたく騒ぎながらもつつしみ深く、天使の音ずれを聞く信仰にあふれた表情と会い、二人共に胸に手を組んで心もち身をかがめ、胴体は退いて顔が近づき、ほどよき間隔に満ちた聖霊の空気。この敬虔な絵は数巻の注解書にまさって、受胎告知の意味を私に啓示するところがありました。
(ルカ伝講義、26)
もう一つの『受胎告知』(133 K)はCGFAで見ることが出来ます。