初夢(はつゆめ)

内村鑑三

めぐみのつゆ、富士山頂にくだり、
したたりてそのふもとをうるおし、
あふれて東西の二流となりぬ。


その西なるものは海をわたり、
ペクトュをあらい、クンルンをひたし、
テンシャン、ヒマラヤのふもとに水注ぎ、
ユダの荒野に至りてつきぬ。


その東なるものは大洋を横断し、
ロッキーのふもとに黄金崇拝の火を滅し、
ミシシッピー、ハドソンの岸に神の聖殿をきよめ、
大西洋の水に合してきえぬ。


アルプスのみねはこれを見て
あけぼのの星と共に声を放ちて歌い、
サハラの砂漠は喜びて
サフランの花のごとくに咲きぬ。


かくて水の大洋をおおうがごとく、
エホバを知るの知識全地にみち、
この世の王国は化してキリストの王国となれり。


我は眠りよりさめ、ひとり大声によばわりていわく、
「アーメン、しかあれ、
みこころの天になるごとく地にもならせたまえ」と。

(1907年1月)