2019年度 北欧ノルウェー・デンマーク学校訪問

および 今後の学校間交流に向けて 』  

 

愛農学園農業高等学校 校長 直

 

序 本校創立以来の歩みにおける北欧との関係について

 

本校は、1964年4月開校以来、56年目を迎えたキリスト教主義小規模全寮制農業高等学校である。本校歴史において、創立初期から中期にかけて、海外の諸国、特に西欧スイス、北欧ノルウェーのキリスト教宣教団、および、農業関係者のお世話を受け教育活動を実践してきた歴史がある。本校は創立当初から27期生在学までは、4年制の農業高等学校であり(現在は3年制で4年目は3年卒業後の自由選択コース(:農業専攻科)となっている)、4年目に約11ヶ月間、国内各地域の本校とつながりの深い篤農家に住み込み、農業と農家生活について学ぶ時が用意されていた。その過程の中で希望者には海外での研修(スイス(1期生~)とノルウェー(8期生~))の研修の機会も用意されていた。しかし、この海外農家研修は残念ながら諸事情で24期生までで修了となった。その間にスイスでは61名、ノルウェーで43名、合わせて104名の生徒が海外農家研修を行っている。24期生までに在籍した約620名の生徒の約17%もの生徒が、これらの国での貴重な農業・農家体験を与えられたのであった。

 

筆者は、2000年4月から本校に勤務することとなったが、本校に赴任する以前、1993~96年まで家族を伴い聖書の信仰の伝道と聖書に基づく教育の研究のためノルウェー(とデンマーク)に留学し、両国のキリスト教信仰に立ち教育を実践してきた諸学校(小規模・全寮制の私立の農業高校を含む)を個人的に訪問し研究してきた経緯と、8年前から本校の教育上の責任を負うようになったことをきっかけに、今までの愛農高校の歴史において中途で終了となった生徒の海外研修を新たな視点から見直し、本校の今後の歩みにとって有益な示唆を与え得るような北欧の三愛精神の流れをくむ農業高等学校を含む諸学校間での生徒・教職員交流を始めるため、筆者が以前に訪問し関心を持ち続けてきた、ノルウェーとデンマークの諸学校を、この度再訪問させてもらうと同時に今後への学校間交流の初期段階の相談をさせてもらうため、この夏の終わりから初秋にかけ三重県私学協会の経費的支援も受け出張した。(本校の教育の基本理念は、デンマークの思想家・教育者・牧師であるN.F.S.グルントヴィーの提唱した聖書に基づく三愛主義からきている)

 

1.    学校視察・相談の日程について 

表1の日程で学校訪問と相談の時を持った、また、図1には訪問した諸学校の位置を示してある。

 

Figure 1 南ノルウェーおよびデンマーク

2.学校訪問・相談の経過について  ( 訪問各校のHPアドレスも記しておいた )

A ノルウェーの諸学校訪問と相談について

(1)トンブキリスト教主義高等学校( Tomb Vidergående Skole・・・南東ノルウェーの村にある

  筆者の1994年ノルウェー在住当時は、トンブキリスト教主義高等学校は全寮制に近い農業分野のみの150人規模の伝統ある学校であったが、現在は農業分野(馬に関する畜産も含まれる)の他に、木造を主とする建築関連のコース、農業機械とも関連させたメカニック関連のコース、さらに大学進学がスムーズにできるような教科の学べるコースも加わり、学校として創立以来それまでにない改編が行われており、生徒数も250人規模になり、学校周辺地域から通学する生徒も増え、寮生活する生徒は全体の60%程度とのことであった。ノルウェーを代表する農業系の私学の伝統校も以前と内容・生徒数共に変化が見られた。

日本で元宣教師として働いておられた女性で、現在は帰国後トンブの英語の教員となられている先生の通訳としてのご協力も受けつつ、二人の教頭先生(女性)と今後へ向けた相談をさせて頂いた。基本的に好意的な話し合いであった。お二人の教頭先生のお一人は、年配の方で筆者が以前訪問した時の校長先生の御つれあい

であった。また、もう一人の方は、比較的若い先生でコースごとの教科等の責任を負う方であった。この学校の生徒たちの中には、いろいろな点で日本に興味を持つ生徒もいて、先生方としては将来的に相互交流が実現できると有難いとも言われた。

 

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(2)サガヴォール国民高等学校 Sagavoll Folkehøgskole

・・・南部ノルウェーテレマーク地方の山間の村にある

この学校は、デンマークの教育者N.F.S.グルントヴィーの提唱した国民高等学校で、聖書に基づく130年の教育の歴史があり、ノルウェー国内でこの種の学校で最も重要な学校である。約10ヶ月の1年のコースの130人規模、大半は18以上の高校卒業後の若者の集まる一部インターナショナルの要素もある全寮制の学校である。筆者夫婦学生として、また、教育研究者として二人の幼い娘と共に1993~1995年までの2年間滞在させてもらった学校でもある。

学校は典型的な静かな岩山と森に囲まれた果樹(リンゴ、サクランボ、プラム、イチゴ)の産地として有名な村にある。本校の中でこの学校に籍を置きつつ教育・文化・農業等の研修を家族も伴ってしたいと希望する教職員があり、その可能性について校長先生と相談させて頂いた。学校の基本スタイルは筆者の在籍していた当時と変化しておらず、2019年度は135名の学生、主としてノルウェー人が入学していた。本校教職員が在籍できれば、日本文化の紹介も含め教育、文化、農業(学校のある村の果樹農家とも相談)等の多面的な研修・交流の機会の与えられることが期待できる。サガヴォール国民高等学校の校長先生は女性で、学校のあるテレマーク地方の山間の町の出身で、同時にノルウェー南東部にある国立農科大学の卒業生として、サガヴォール国民高等学校の校長になられる以前は、テレマーク地方で農業行政・技術指導関係の働きをされてこられた方でもある。筆者としては、この学校へは本校の3年ないし4年の課程を修了後にも希望すれは入学できるため、本校の将来の進路指導としても大きな可能性があると考えている。

 

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(3)リングダールキリスト教主義高等学校 Kristen  Vidergående  Skole  Lyngdal

・・・南ノルウェーの海岸の町にある

 この学校は、南ノルウェーの海岸の小さな町リングダールにある。この学校も1993年秋に筆者が訪問した際には農業関連コース一本の本校と類似したキリスト教主義、全寮制に近い農業高校であったが、現在は350人の生徒を抱え、半寮制、体育コース、情報コース、大学進学コースを加えた学校へ変っていた。

 以前、筆者が訪問させて頂いた時の教頭先生が現在校長になられ、サガヴォール国民高等学校の卒業生として当時から働かれていた先生とも再びお会いでき、さらには当時の校長先生もわざわざ会いに来て下さった。

現在の学校の状況を校内案内をしつつ改めて丁寧に説明して下さり、さらに今後への相談もすることができた。

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(4)ビグランドキリスト教主義高等学校 Kristen Vidergående Skole Bygland

・・・南部ノルウェーの山間の村にある

この学校は、南ノルウェーの山中ビグランドフィヨルドの村ビグランドにある。学校のある村は、本当に山奥の村で、周りは森とフィヨルド状の湖である。この学校は、1996年頃から創立の準備がなされ2004年にスタートしたキリスト教主義の新しい農業高等学校であるが、生徒数60人の小規模全寮制の森林利用(大工さんになる内容も含め)、自然環境利用(狩猟も含む)、畜産(羊・馬の飼育)等のコースもある学校である。ノルウェーの自然は圧倒的で、如何に自然環境、農林業等に関わりつつ生きるかという自然との共生をフィールドワークを多く取り入れつつ学べる学校であった。教頭先生が詳しく学校を案内下さり、また、今後への相談をし、その日は学校のゲストルームに宿泊させて頂いた。

 

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B デンマークの諸学校訪問について

(1)ハンメルン農業学校 Agroskolen Hammerum・・・デンマーク・ユラン中部地方の村にある

この学校は、中部ユラン(ユラン半島)にある伝統的農業学校(以前に筆者が訪問させて頂いた当時も)であり、現在も日本の農業高校・農業大学校合体的仕組みの学校として続けられている。しかし、学校農場は手放し、卒業生が多く周囲で農場を経営しておられるので、そこでの実習を大きく取り入れた約3年生のコースとなっていた。以前は、先ず2年間学校と学校農場で学び、その後2年間校外農家研修をし、再び仕上げの学びを学校に戻りして卒業する過程があった。現在はコースとして少し短くしたことになる。半寮制の学校で学校周辺からも通学している。

  この学校の教育課程は、本校の専攻科の過程と類似する点があり興味深い。若い先生のお一人が筆者との対応に時間をさいて下さり、今後への願いをその時は用があり不在であった校長先生にお伝え下さるようにお願いし、失礼した。

 

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(2)カーレー有機農業大学 ( Økologiske Landburksskole Kalø

・・・デンマーク・ユラン中東部地方の海岸の町Rønde近郊にある

この学校は、中東部ユランの海岸に近いRønd郊外のKaløにある大学に隣接する土地に、近年北部ユランの村にあった学校と農場(ここにも以前に筆者が訪問させて頂いた)から移転してきたのである。現在は持続可能なインターナショナルの有機農業大学とし運営されている。ここは校内にある農場での実習とインターンシップとしての校外実習を大きく取り入れた大学である。学生数70人、学生年齢は、15歳から60歳位にまでおよび、インターナショナルの全寮制(60%デンマーク人、40%欧州各国から:イタリア・スペイン・スウェーデン・他)の大学(College)である。

  この学校の教育課程も、本校の専攻科の過程と類似する点があり興味深い。今回訪問した日は、フィールドワークの授業の多くある日で、皆先生方は授業中で忙しく、中堅の女性の先生お二人が筆者との対応に時間をさいて下さった。今後への願いを校長先生にお伝え下さるようにお願いした。筆者一人で農場全体を自由に見学できるよう資料を用意下さり、興味深い農場を見学でき意義深い時なった。この一人での見学中に農場周辺で野外授業をしている幾つもの先生と学生のグループに出会い、学生や授業の様子も垣間見ることを許された。

 

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3.訪問・相談の結果と今後について

 

(1)訪問・相談の結果について

   ノルウェー、デンマークそれぞれの国の社会の変化の中で、特に私学のキリスト教主義寮制農業高校の

  現在の様子を改めて確認できたことは、本校の今後へ向けた示唆に富む訪問となった。

また、今後の本校が希望する特に教職員、在校生・卒業生・保護者の研修・交流についても、本校の思いを伝え、相互に多少なりとも意見交換のできたことは、今後のさらなる相談に重要な意味を持った。

本校の教育現場の責任者として、本校の願いの実現の可能性を感じることのできた訪問の旅となったことを心より感謝している。

 

(2)今後へ向けて  次の以下の諸点に関し本校として努力して行く予定である。

本校内でこの新しいプロジェクトへの理解を、教職員、生徒、保護者と共に深めることが先ず大切である。

   教職員の渡欧研修のための人事上の詰めが急がれる。

   生徒の交流のための年間予定の中での詰めの必要(相手方の年間予定とも関連し)。

本校の海外諸国との研修・交流ビジョンの深化、その点の教職員間共有の必要。

 

4.お 礼

   私学協会からの海外研修助成の経済的支援を頂き、この度おもいきった海外学校訪問と今後へ向けた相談の一歩を、本校としてさせて頂いたことに対し、改めてお礼申し上げる。

 

( 掲載写真の簡単な説明:今回は撮影をしている余裕がなく、不十分な内容であるが、一応各校の学校周辺・

内部施設・諸先生・農場の様子・学校近隣の自然環境について載せてある。

デンマークに関してはユラン半島の植林による農地化の歴史(「デンマルク国の話」内村鑑三著)と関連し今回撮影できた写真も掲載(一部飛行機上から撮影))

 

以上をもって報告とします。

                                ( 2020.2.20 著者 )