「 愛農学園農業高校の歴史におけるスイス・ノルウェー海外農業実習を振り返る Ⅰ 」  

愛農学園農業高等学校 校長 直木葉造

本校教育の将来を見据えて、2019年度末に愛農運動、愛農教育の三位一体と言われている聖霊社・愛農会・愛農高校合同で、しかし、取りあえず高校主導 で、ホームページ上での研究所が開設されました。「あいのう研究所」と呼ばれます。研究所内の研究部門は大きく4分野に分けられます。 1.農業研究部門( 人を含む生物の持続可能なより良い生き方のために )2.教育研究部門( これからの愛農教育、日本・世界の教育のために )3.聖書研究部門( 聖書の研究と真理としての信仰を伝えるため( 特に若い人へと農村の方々への伝道のために )4.スイス・北欧研究部門( 日本と世界の平和を願い中立・平和に関し先進的歴史をもつスイスと北欧諸国から学ぶために )です。今回その中で校長の直木が直接関係しているスイス・北欧研究の分野に関し、表題の内容について2019年4月以降2020年7月までに関連資料を 調べ明らかにできた内容を紹介させて頂きます。愛農教育のさらなる充実のために、本校の歴史に関しこの点を改めて確認し、現在および今後 本校教育に関わって下さる教職員の方々に知ってもらう必要性を感じ、この課題に先ず取り組むことにしました。

私的なことですが本稿の内容との関連もありますので、先ず最初に筆者自身の今ま で歩んできた経過について少しふれさせて頂きます。筆者は本校に赴任する以前、1993~96年まで家族を伴い聖書の語る真理である信仰 の伝道と聖書に基づく教育の研究のためノルウェー(とデンマーク)に留学し、両国の信仰に立ち教育を実践してきた諸学校(小規模・全寮制 の私立の農業高校を含む)を個人的に訪問し研究してきた関係で、今後本校とそれらの諸学校との交流を始めたいとの願いから、昨年夏8月 23日から9月7日までの約3週間両国に渡り、以前に訪問したことのあるそれらの学校を再度訪問し相談をしてきました。筆者は愛農高校の これからの歩みにおいてスイス・ノルウェーを中心とする北欧の方々と本校の生徒・保護者・教職員・同窓生・愛農関係者との有意義な交流が 復活または新たに生み出されていくことを願っています。近い将来に先ず愛農高校とノルウェーのキリスト教主義全寮制農業高校との間での学 校間交流を始める予定です( その中の一つの農業高校は、以前二人の女子の卒業生が一年間農業研修をさせて頂いた学校です )。それらの学校と今後さらに相談を重ね、本校として発展的な教育活動を企画して行ければと思います。

少々わき道にそれましたが、本題の内容に戻ります。愛農高校の歴史における海外 農家実習は、スイスでの実習が1期生の時から開始され、ノルウェー実習は7期生から始められました。スイス・東アジアミッションの関係者 (特にスイス・東アジアミッション日本三重県代表の内田伊三雄先生ご夫妻(現在三重県名張市在住・ご存命)、ノルウェールーテル伝道団 (アルネ・ソーロス先生ご夫妻(当時岡山県蒜山農村センター所長、現在ノルウェー・西海岸スタヴァンゲル近郊のサンネス在住))、他の 方々のお世話で実現に至ったようです。しかし、その後愛農高校の状況変化( 全寮制学校運営の難しさ等々 )により、それまで続けられてきた本校主催の海外農家実習は24期生を最後に終了することになりました。スイスへは1期生から22期生まで、ノルウェーへ は7期生から24期生まで実施されました。今回、海外農家実習参加生徒の本校在籍時期、お世話になった農家名・地域を確認整理しました。 それらを地図・表に示してあります(地図・表をまとめるため実習に参加された卒業生の皆さんに資料をお送りし確認のため見て頂きご教示頂 きました。お忙しい中ご協力下さり有難うございました。この場をお借りしてお礼申し上げます )。

今回の確認・整理作業の中で改めて、愛農高校の歴史の初期の頃スイス・東アジア ミッションの関係者の本校教育への励まし、具体的支援・協力のすばらしさ、途中から関わって下さったノルウェールーテル伝道団・他の方々 のご支援、そして、100人を超す愛農生の長期農家研修を受けて下さった両国の農家の方々のお世話で、如何に多く本校卒業生が貴重な研修 の時を若き日に与えられたかを強く感じ、改めて感謝の思いが溢れました。

愛農高校では創立以来、重要な取り組みとして本校教育課程4年目として約30年 間「農業専攻過程」が必修として続けられて来ました。その後は卒業後の選択コースへと変り、今日まで1年制の「農業専攻科」として続けら れてきました。この過程は農業後継者を育てるために本校農業教育において大きな役割を果たしてきました。その経過の中で、希望者にはスイ ス・北欧ノルウェー農家研修のプログラムも用意されていたのです。しかし、この海外農家研修プログラムは先にも記しましたが諸事情によ り、24期生までで終了となりました。そのため愛農高校の現在の生徒、保護者は当時のことについてはほとんど何も知らない状況にありま す。

四半世紀にわたり実施された海外農家研修プログラムに参加した生徒は、24期生 までの本校を卒業された約620名の方々の内105名( スイス研修60名、ノルウェー研修45名 )で、全体の約17%にものぼっていたことを今回確認しました。スイス農家研修の地域は広範囲にまたがっていたのに対し、ノルウェーでの農家研修の地域は 南東部の地域に限定されていたことがわかります。ノルウェー農家研修の場合は、お世話役の主となって下さった農家のあったことも研修をさ れた卒業生の方から伺っています( Martin MØrgedal さん:ノルウェーで17年間お世話になった中で、ほぼ毎年のように受け入れて下さいました )。また、愛農高校の卒業生( 福島県二本松の農家の出身の方)の兄さんで、基督教独立学園の卒業生の方も、当時愛農生に混ざりノルウェーで研修されていたこともわかりました。愛農高校 の卒業生の中には本校主催の海外農家実習が終了後も民間の研修制度を利用しスイスへ渡った方々が何人もいます。

以上、今回スイス・ノルウェー実習の全体像を基礎資料に基づき浮き彫りにしてき ました。改めて貴重な様々な事実を確認することができたと考えています。本校前校長で現在も非常勤講師として愛農高校の教壇を守って下 さっている1期生の奥田信夫先生もスイスでの農家研修をされた方であり、本校理事・評議委員会の中の理事長であり7期生の石井康弘さんは ノルウェーで、また、評議委員の8期生の常盤達子(旧姓池田)さんと10期生の野呂千佳子さんはスイスで、さらに現同窓会長で13期生の 東雅史さんはノルウェーでそれぞれ農家研修された方々です。スイスとノルウェーそれぞれで研修なさった方たちの中には、今も何らかの形 (再びお訪ねになったり、FACEBOOKで連絡を取られていたりとか・・・)でお世話になった方々と交流を世代をまたげて続けておら れ、愛農高校の今後にスイス・ノルウェー両国の方々との関係の復活を望む思いを持ち続けていて下さっている方もあります。筆者としては先 ず学校間交流的なことから再スタートし、徐々に新たな形での農家研修の動きも復活できればと思っています。

この報告を終えるにあたり、今後のこととしてはスイス・ノルウェーで実習をされ 当時報告文を残された方々の貴重な資料を、過去のものとして眠らせてしまわないように、何らかの形で再び皆さんの目に触れられるようにで きればとも考えています。

( 参考資料 : 内田伊三雄先生保管資料、愛農学園農業高等学校20周年誌・30周年誌・40周年誌・50周年誌、 学園報 『 愛農ケ丘 』、全国愛農会機関誌 『 愛 農 養 鶏 』、『 愛 農 』、『 愛 の 家 』、研修された卒業生からの情報  )

「  半世紀過ぎましたが、思い出が多くて未だに夢にまで出てきます。妻と必ず死ぬ迄に訪れようなと話しています。早く再訪しないと先がナイ !! 皆様も御元気で !! 」      

                                                                                                                                            ( 2期生 片山清和  )

「  ノルウェーのODDVAR  MUSTORP 家でお世話になりました。・・・ちなみにODDVAR は長男のMORTIN に経営をゆずってからは、本人はアメリカに移り住んでいると聞いています。 」

     ( 9期生 西田治幸  )

「  遥か昔の事になっていましたが、わたしのスイス実習は、愛農高校を志願する原点でもありました。今回このような形でつながっていることが嬉し く、感謝いたします。 」      

                                                                                                                                     ( 10期生 和田千佐子  )

「   いつも愛農のためにお働きいただいてありがとうございます。又、スイス・ノルウェー北欧研究部門では、いろいろとお世話になります。久しぶりにスイスの地 図や住所を見て懐しい時間を持つことが出来ました。お世話になった農家にもお便りを出さなくてはと思っています。先生もお忙しい中、お身 体気をつけられてお過ごし下さいね。 」                                

                                                                                                                                    ( 10期生 野呂千佳子  )

「  こんにちは、ご無沙汰しております。お便りいただきありがとうございました。懐かしく見せていただきました。私と道下静香さんとは二人で同じ 農家でした。愛農の10期生でノルウェーには1977年9月から1978年10月までいました。最初は書かれていたTOMBの農学校での 助手としての受け入れだったのですが、すぐに当時学校の理事をしていた農家に変更されました。HALDENの対岸でKVELDE という町です。 HARALD  A . HOLM    3272  KVELDE  NORGEです。農家の人達も親切で家族のように扱っていただきました。近くにノルウェーの方と結婚された日本人の方がみえほんとうによくし て下さいました。この一年の経験は、私の人生の糧となって生かされています。ありがとうございました。 」                                     ( 10期生 田中里美  )

「  今回は貴重な情報ありがとうございます。」                                                   ( 11期生 三嵜敏男  )

「  久しぶりに、スイスの農家( EPSACH)の位置を確認しました。( グーグルで ) すると家の前に存在したあの大きい牛舎がすっかり無くなって、見た感じだとくつろぐ場所 ? みたいに、様変わりしていました。農業情勢も厳しいものだと感じます。当時から39年(約40年)も経過していますから、4人の兄弟(姉2人、弟2人)達 も50代にまでなっていると思います。当時 姉(16歳、14歳)弟(11歳、7歳?)  」                                        

                 ( 14期生 宮岡径吾  )

「  スイス実習を振り返ると、愛農の農業技術は劣っていなく高い技術だと思いました。気候に適した農法で無理なく土地の大きさに合った乳牛の飼育 をしているため公害もなく地域に適応し、共存していると感じました。愛農の伝統の有機農法、無農薬農法は守るべきと思います。安全、安心 な農作物は今の時代にマッチしていると思います。最後に小谷学園長、浦田理事長時代におそわった世代として、その精神は私の人生にささえ になっているとつくづく感じました。愛農高がいつまでも続くよう、卒業生として希望します。」                                       ( 16期生 藤井孝志 )

「 いろいろと資料を送って頂き有り難うございます。 」                                      ( 16期生 村上 泉 )

 

  ( 卒業生のお名前は、全て旧姓のままとさせて頂いてあります。 )

** H.P.掲載 関係資料

           1.海外農業研修(スイス・ノルウェー)に参加された 各 期の生徒数グラフ

           2.スイス地図( お世話になった地域を示したもの )


           3.ノル ウェーそれぞれの地図( お世話になった地域を示したもの )


           4.海外農業研修生の名前およびお世話になった農家 一覧表

           5.ス イス:お世話になった農家別研修生一覧表


           6. ノルウェー:お世話になった農家別研修生一覧表