花崎 雪さん

愛農高校は、高校卒業後さらに深く農業を学びたい学生向けに農業専攻科という選択肢を用意しています。農業専攻科では、1年間プロの農民の家庭に入って生活を共にしながら農業技術の基本と経営について学びます。そして、専攻科修了式で「私の歩む道」を発表します。2016年度に農業専攻科を卒業した花崎さんの発表を紹介します。


私の歩む道

花崎 雪さん
50期(2013年度入学)
島根大学生物資源科学部農林生産学科

 

 私は、専攻科生活を千葉県の林家で送らさしていただきました。私にとって専攻科は農家の花嫁修行のようなものだったと思ったりもします。
 
 林家では農業だけでなく、ご飯の準備や食べること、会話や地域の行事など生活のすべてが“人と環境にやさしいもの”という信念の上に営まれているように感じながら過ごしました。

 私は専攻科、林家で何を得たのでしょうか。そう問うた時、浮かんでくるものがあります。それは、誰かのために何かにひたむきに働く姿勢です。そのために人は、自らの体と心と時間を、人生を注ぐことができる。知恵を絞り、尽くすことができる。人が力を持つとき、強くなれるとき、優しくなれるときです。本当に尊いことです。表現の仕方はたくさんあると思いますが、人が何かをするとき、僅かでもここが含まれているのではないかと思います。

 林家での毎日から、働くということは共に生きる人の幸せを祈るかたちであり、思いを伝える手段であると思うようになりました。農業で言うと、地道に畑で自然と向き合いながら食べる人のことを想い、汗を流して食べ物を作って命を生かしていく。林家で行われている提携販売からも消費者とともにある農業が常に営まれていたように思い、思いを持った消費者の上に成り立つ農業とその強さを見ることができたと思います。食や農は人々の中で成り立ち、人を繋げていく。

 人は農に守られ、農は人に守られてきたのだろうと想像しました。そして、私もその手段の一つに農業を選んでいきたいと思っています。それは、専攻科の間、私の中で農業というものが、畑というところが「自分」を濾されず、淀みなく素直に出すことのできる場所であると気づいたからです。

 そのような専攻科生活は、考える時間がたくさんありました。自分はどういう人間なのかということの他に専攻科の間考えていたことは、生き残っていける農業のあり方とはどういうものかということです。自然の変化は時間をかけて着実で確かです。畑にいると、今社会で起こっている物事のスピードがより一層速く感じることに違和感を抱く時があります。その度に、どんな時代であろうと人が生き残っていける農業のあり方とは。山間地で残っていける農業のあり方とは。

 なぜ農村を残さなければならないのかと問いました。私の周りにはすでにその答えを持っている人もいます。しかし、その問いは、次の進路を決める弾みにもなりました。
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 私は、農業に限らず、農村や人々の生活のあり方、モノのまわり方を多くの人と考えながら生きていきたいです。実践ほど強いものはないと思います。しかし、その為のきっかけと考える材料やヒントを探してみたく、それを求めて地元の大学へ行き、名を借りながら自分の足で農村を歩き、厳しい社会、時代を乗り越えて農業や生活を営んできた色々な人に会ってみたい、もっと色々なことを学んでみたいという思いへ辿り着きました。

 自分たちの力で知恵を絞り、身の回りにあるもので生活を成り立たせ、必要以上のお金や高い地位でもない。共に生きている人を大切にしてそこに幸せを感じて生きていくことのできるような世の中を今の人と分かち合いたい。そして、それを自給と呼ぶものなのではないだろうかと思うようになりました。時代は変わっても生き残っていけるかたちであるということを自分の生き方の中で示していきたい。陽だまりはここにあるのではないかということを問うていきたい。

 私は島根に帰ります。そして百姓になりたい。山間で時間をかけて心の底から誰かのために百色の汗を流し、人々が心の中でもふるさとを忘れないために、日本を支えるひとつの農村からひたむきに働いていきたいと思います。その姿勢こそ、毎日を共にさせてもらう専攻科だからこそ私が得ることのできた最も大きなものだったように思います。

 私は、草の庭という実家のお店を継ぎ、人と人が集まり交わる場を残していくことを決めました。そして、その地で耕されてきた土を受け継ぎ、農業をしたいと思っています。そして、愛農の精神を生涯をかけて学んでいきたいです。

 これから、思いもよらなかったことが幾度となく訪れるかもしれません。山路は長くずっと途中です。そして、これからです。愛農に出会えたこと、林家でお世話になったこと、夢を持てたこと、たくさんの方にお世話になり、たくさんの方の一所懸命な姿を見させていただけたことに本当に感謝でいっぱいです。本当に尊い時間でした。ありがとうございました。

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