井熊 優喜(53期)シソ

2017年度 校内意見発表

シソ

2年 井熊 優喜(53期)


「こんなクソみたいな学校辞めてやる」と口癖のように言っていた1年生の2月、僕は本気で愛農学園から去ろうと思っていた。だがそれは学校生活の楽しさや苦しみをわかった振りをしていただけなんだと、今振り返ると思う。そして、愛農学園を辞めるという選択をしなくて本当に良かったと思う。それは、今僕は愛農が好きだからだ。そして、この学校にもっと「いたい」と強く思うのだ。

 

ここまで180度自分の思いを変えられた愛農学園は改めてすごい所なんだなと思う。そして、自分の将来も決まってきたのだ。学校を辞めたいと毎日のように思っていた時には未来に希望なんて無かったが今これしかないと思うものがある。
それは「農業」だ。そしてここまで農業が厳しい時代と言われてる中、だからこそ農業がしたいと強く思ったのにはある出来事がある。その出来事は自分がある先輩と男子寮前で始めた家庭菜園で起こった。自分たちだけでウネを立てて汗を流し話し合いながら植物を育てていくことを通じて、植物を育てることが面白くなった。

 

その中で面白いを超えて美しいとまで感じさせられた植物がある。それは「シソ」だ。キュウリの葉やメロンの葉をよく食べるウリハ虫という虫がいて、その対策として、シソをコンパニオンプランツにしてみようという話になった。
ちょうど近くでシソを大量に育てている同期がいてシソをもらった。シソの根をちぎらないように土の奥からシソを抜いたら数十秒後いきなり太陽に向かって元気よく伸びていた葉が元気をなくしてしまった。僕は「やばい」と思いすぐにキュウリのとなりにシソを植えなおした。その日は暇があったら「シソ」を見に行った。でも、ずっとしおれたままだった。元気をなくしたシソを見ながら、「明日シソを見に行ってもどうせ枯れて死んでいるに違いない」なんてことを心の中で思いながらその日は寝た。

 

次の日、いつものように朝起きて、ラジオ体操をして寮の掃除をして、キュウリの葉に付いているウリハ虫を殺しているとなにかを感じたのだ。そう「シソ」だ。この時僕は思った。「シソ復活してる!!」シソを植えた直後は元気をなくしてその日一日中ずっとしおれていたのに、次の日になったら元気よく太陽に向かって立っていたのだ。植物は基本喋らないし、感情すらわからない、でもこの出来事があり、少なくとも植物は必死に生きようとしている命を持っている生物ということを実感した。

 

そしてこの生きようとする植物の必死さが胸を熱くさせ、僕に美しいとまで感じさせたのだ。この出来事を見て思ったことがある。それは愛農学園の建学の精神だ。建学の精神には「土を離れた生命は枯死する」と書いてある。まさにシソだ。そして、人間にも同じことが言えると思うのだ。人間がもし土から離れたとしたらどうなるか、あのシソのようにしおれてしまうのではないか。僕が今まで不安定だった時足りなかったのは土なのかもしれない。

僕は2年生になり酪農部に入った。そのゴールデンウィ―ク管理で山に入ってシカを捕まえるために穴を掘ったり竹をとってきてヤギ小屋を造ったり草の上で昼寝をしたりした。そこでは自然の風や光の中にいて心がすごく安らいだのだ。土があるから森も風も空気もある。そこで生きているという充実感を得ることができた。

 

農業は自分が土から離れず生きていける理想的な職業だと思うのだ。そして、農業というのはお金にはあまりならないかもしれないがお金じゃない本当の幸せというのも「ある」と思う。自分にとって本当の幸せとは愛する人と共に支え合いながら農業をするということだ。だからこそ、高校を卒業したら専攻科に行き一年間農家の暮らしを経験してみたいと思っている。

 

しかし、その後すぐに就農したいという訳ではない。自分にはやりたい事学びたい事自分の目で見たいものがまだまだある。自分の経験や知識の幅をもっと広げたいと思っている。そのため例えば、海外で色々な農家で農業研修をしたりNGO団体に参加し世界問題と言われるものを肌で感じてみたいと思っている。国内では、幼い時からの夢である、動物園の飼育員もまだ諦めてはいない。自分が選んだ人生は最終的な目標である農業にきっと活かされるはずだ。だがどんな選択をしたとしても苦労はするし大変であることは、間違いない。何度も挫折もするかもしれない、思い通りにいかないことのほうが多いだろう。でも、そんな時すぐに挫けて諦めるのではなく、そこで踏ん張り未来に向かって歩んでいきたい。

 

そう あの、シソのように!