伊藤早希(54期) 無添加とおいしさ

2017年度 意見発表

無添加とおいしさ

1年 伊藤早希(54期)


「ここでしか得られないものが必ずある。」

初めて愛農高校に来たときに触れた、先輩方の団結力や自然に囲まれた環境、自分が持っていなかったそのすべてが魅力でした。これが、私がこの高校を選んだ理由です。

 

入学して1ヶ月と半、覚えなければいけないことの数の多さに圧倒されつつ、毎日を新鮮に過ごしています。その日々のなかで、深く印象に残っていることが幾つかあります。

 

養鶏部が育てる鶏の生卵を初めて割ったときのことです。「あれ、これ腐ってる。」その瞬間の私の気持ちです。今まで家で食べていた卵の赤みがかかったオレンジ色とは、はっきりと別物でした。「黄身のオレンジ色が鮮やかであればあるほど、新鮮で、良い卵なんだ。」と思い込んでいた私には、腐っている卵だ、と思うしかありませんでした。そのときの表情があまりに目についてしまったのか、そのときある方が、「いわゆる普通の卵は、あとからわざと添加物で色をつけているんだよね。」と教えてくださいました。

 

本来の卵の色を初めて知った瞬間で、人生で一番、卵をよく味わって食べた日です。今でこそもう慣れましたが、あの驚きは小さなものではありませんでした。
もう一つ、今度は養豚部が育てている豚の加工品のことです。おいしいはおいしいのはもちろん、わたしが驚いたのはその原材料の少なさです。「豚肉、食塩、砂糖、胡椒」たった4つしか書かれていませんでした。過去に、半ば好奇心で様々なスーパーや百貨店へ、一番原材料が少ないお肉の加工品はどこに売られているのか、と探し回ったことがあります。

 

どれ一つとして原材料たった4つ、しかもお肉と、家にある調味料だけで作られているものはありませんでした。愛農のものってすごいな。そう思って食べるソーセージやお肉はやはりとてもおいしい。「これからお肉は愛農のものだけ食べて生きていこう。」もちろん値段は抜きにして、本気で思ったほどです。これらのものを見たときの衝撃は、まだ、はっきり覚えています。
愛農高校でこういった食べ物を見たとき、いままで食べていたものは何だったのか。と落ち込みました。しかし、同時に、「愛農」という組織が「無添加」ということに本気に取り組んでいることを知らしめられました。

 

私は、以前体調を崩して長い間入院したことがあります。それがきっかけで、“食”に興味を強く抱くようになりました。
 
なので、添加物の中に環境や人体に悪い影響をもたらすものがあることや、その代表的な添加物の名前は知っていました。しかし、添加物の種類の多さ、面倒くささから、どんな用途で使われていて、なぜ、それが良くないのか。という根本的で大事なところを調べようとさえ、していませんでした。でも愛農にきて、実際にその食べ物を作っている先生方、先輩方のお話や思いを聞き、「このままでいいはずがない。自分は添加物に関しても全くの無知で、知ったかぶりをしていただけだ。」と気づくことができました。関連する本を読み、より注意深く食品の裏を調べたりして、真剣に正しい知識を深めていきたいです。

 

しかしながら、私は農薬、添加物は悪いところしかない、などとは決して思いません。事実、日持ちもよくなり、腐ってしまう心配を減らすことができます。短時間で食事を済ませたい方や、値段のことで、それを選ばざるをえないも少ない人数では無いでしょう。
私は、お百姓をしていた祖父母のお米、野菜を食べて育ちました。いわゆる普通の育て方をしていたので、無農薬ではなかったでしょう。休日には、添加物がはいった市販の調味料を利用した祖母の食事を食べていました。けれども、私は今こうして元気に過ごしています。何より、祖母の作ったカレーは今でも大好きな味で、一生変わりません。

 

それでも私は、無添加、無農薬はおいしさの一部としてかならずつながっていると信じています。作物部が育てたお米を品評会へ出した結果も、より上位へと頑張っている姿も見ています。
この文章を書くにあたって、「おいしい」とはなんだろう?と考えました。けれども、深い沼に落ちるようで、答えはなにもでませんでした。

 

食の安全、安心が高まっている今、このブームをブームで終わらせず、もっと知ってもらいたいです。もう少しだけでいいから、農薬をできるだけ減らそう、なくそうとしている農家の方々、添加物をいれないものを、と頑張っている生産者の方々にスポットライトがあたってほしいです。私は将来も、化学物質で作られたおいしさよりも、大地が生んだおいしさを選ぶ人になりたいです。そして、あまりたくさんのことを考える必要はなくても、「愛農のものだから。」と買えてしまう高校生という今の立場を最大限に利用していくつもりです。