辻はるか(54期) 種を守り、つなぐ農家になりたい

2017年度 校内意見発表
種を守り、つなぐ農家になりたい
2年 辻はるか(54期)


京都府の北端、京丹後市に梅本農場という有機農家さんがいる。4ヘクタールの農地で年間150種類の野菜を有機栽培している農家さんだ。中学3年生の時、家で食べた野菜のおいしさに感動し、どんな人がどういう風に育てているのか興味を持った。そのつながりから、梅本農場の農業体験に行くようになった。

 

梅本さんは、食品流通会社に出荷したり、個人客に配達したりするほか、地元の小学校の給食用にニンジンを卸しておられる。それだけでなく小学生の畑体験や、食育の授業なども行っている。畑体験では、小学生が梅本農場を訪ね、畑に入り、自分たちが食べているものがどういうところで育ったものなのか、自分の目で見て、肌で感じている。梅本さんはここで生きた農業を教えている。地域の小学生たちは梅本さんとの交流を通して、農業の大変さや、食の大切さを感じているのだ。

 

梅本農場では、種を自然農法センターや種の森などから購入している。どれも自然農法、無農薬・無化学肥料で栽培されている種だ。有機栽培の種を使うことによって、有機野菜を求める消費者に本当に安心して野菜を買っていただくことができる。だから小学生にも、自信をもって安心安全な食材が提供できているのだなと思った。梅本農場では野菜のことだけでなく、土や種のこと、農家としてどんな食べ物をつくっていくかということも学んだ。

 

私は、愛農高校に入学して、2年目を迎えた。野菜部を専攻し、朝と夕方の管理作業や、実習に励んでいる。朝眠くても、冬寒くても、畑に出なければならない。野菜を作るというのは単純なものではなかった。野菜部では、ゴーヤ、ツルムラサキ、エンドウ豆など、約10品目の野菜の種を自家採種している。今年の春には、学校で自家採種している種をまいた。「毎年、先輩方がつないできた種」。そう思うと、種の中に一代では成しえない壮大なストーリーが見えた。このストーリーを途切れさせてはいけない、つないでいかなければと思った。 

 

野菜部で栽培している野菜は、学校の調理場にも出荷している。朝、昼、晩、生徒が自分で育てた野菜を食べているところを目にする。「今日の玉ねぎ、甘くておいしかったよ!」「今日の小松菜、筋っぽかったわー」自分がつくったものが誰かの口に入る光景を毎日見て、生産者としての喜びと、責任を感じる。

 

愛農高校では、5月に地域の小学生と、田植え体験をしている。小学生たちは、「こんなんからお米ができんのかー」と驚いた様子だった。はじめは田んぼに足を入れることに戸惑っていたが、最後には、田植え体験が終わるのを名残惜しそうに田んぼを見ていた。小学生に食べ物がどうやってできるのか、農業の楽しさを少しでも伝えようとお手本を見せたり、一緒に手で植えたり、思い出になるように接した。その思いが伝わっていた気がして、とてもうれしかった。子どもたちに農業を知ってもらえた瞬間だ。

 

愛農高校に入学するまでの私は、梅本農場とのかかわりから、土にふれるのが好きだから農業をしたいと思っていた。しかし実際の農場を通して、誰かのために農業をする喜びと次世代につなげていく農業の大切さを知った。私にとって次世代につないでいきたいもの、それは「種」だった。梅本農場でも、愛農高校でも、共通して大切にしていたものは種だった。それは、種は命そのものであることを知っていたからだと思う。私は将来、先人たちが残してくれた種をつないでいくため、種の栽培と、野菜の栽培を行いたいと考えている。種を取り、食べ物の元である種のことを子どもたちに広め、次世代に残していく農家になりたい。

 

その活動として考えているのが、親子での種まきと種の交換会だ。親子での種まきはプランターに土を入れ、種を親子でまいて、各家庭に持ち帰って栽培をしていく。育てた野菜を収穫し、親子で料理を行う。種取りと料理を行うまでの間、観察日記を書き、記録を残す。まいた種がどのようにしてできたのか、これからどのようにして食べ物になっていくのかを日々の生活の中で観察し、収穫の喜びを親子で分かち合ってほしい。取った種と、その野菜の育て方、種の取り方の説明書をつくってもらい、次の親子に伝えていく。その家庭ならではの栽培を楽しんでほしい。

 

種の交換会は、親子が育てた種を別の親子と交換し、まとめた記録を頼りに栽培を行っていく。親子同士でも交流を深めたり、地域の風土のことを学んだり、地域のコミュニケーションを持つきっかけになってほしい。また親子で共有することで、食べ物の本当の姿を知り、日々の食への感謝や、自然の恵みに興味関心を持ってほしい。

 

私はまだまだ種のことを知らない。これからもっと勉強して種のことを知って、種を残していきたい。種を残すだけでなく、栽培し種を作り続けることが重要なのだ。そのために種のことだけでなく、農業についてまず一人前になりたい。
種には無限の可能性がある。私たちの意識行動しだいで先人が守り続けてきた種は、形、存在を変えてしまう。種を守り、つないでいく。野菜を作るだけでなく、未来に種をつなぐ人に私はなりたい。