辻はるか(54期)「今、私が思うこと」

2017年度 意見発表
今、私が思うこと
1年 辻はるか(54期)


今、農業について思うこと、愛農で3年間過ごしていくうえで、心にとめておきたいことがある。

 

私は、農業が大好きだ。小学5年生の秋、私は農業に惚れた。オルターという食品流通会社のファーマーズマーケットで私は一人の農家のかたに出会った。その方の手は、分厚くて、大きくて、ごつごつしていて、真っ黒に日焼けしていた。そして、爪には土が入り込まないように短く切られていた。
しかし、その少しの隙間にも土が入り込んでいた。「この方は土とともに生きている。かっこいい。」そう思った。小学5年生の私には、農業がどんなものかも分からず、農業の現場をきちんと見たこともなかった。しかし、あの時、私は確かに農業に惚れたのだ。

 

私が有機農業に関心を持つきっかけになった大きな理由は、たぶん、母の影響だ。母は私を身ごもったことをきっかけに、有機農業、自然栽培の考え方、食品添加物や放射能、電磁波が体に及ぼす影響など、体に優しいもの、地球にやさしいものに興味を持ち、勉強していた。すると当然のこと、コンビニやスーパーなど普通の店で売っているものは、何も食べさせてもらえなかった。

 

友達の家に遊びに行っても、みんなと同じお菓子が食べれなかったり、寂しい思いをした。そんな母への反発心から、隠れてスナック菓子を食べたり、菓子パンを食べたりしていた。私は母の愛を、愛だと気づかず、裏切ってしまったのだ。では、今はどうなのかと聞かれると何とも言えない。どれだけ体によくなお食べ物だと分かっていても、食べたいと思ってしまう時がある。だから、もっと学びたいと思った。有機農業のこと、食品添加物のことなど、きちんと理解したい。そして、良い消費者、良い生産者になりたい。

そんなことを考えていた去年の夏、祖母の勧めで農家さんのもとで短期研修を受けることに決めた。研修先は、京都府京丹後市にある、梅本農場だ。そこは、有機農業、自然栽培で四季折々の野菜を栽培し、鶏を数羽飼っている。そんな梅本農場で10日間、住み込みで研修を受けた。

 

朝の5時、鶏の鳴き声で目が覚める。6時から農場でトマトや、モロヘイヤ、キュウリなどを収穫する。こうして一つ一つ収穫している野菜は、誰かのもとへ届き、その人の命の糧となる。そう考えると、不思議な気持ちになった。9時には作業場に戻り、パック詰めをし、出荷。12時ごろには作業が終わって昼休憩。そして、午後3時から農場での畑作業。ニンジンが芽を出したばかりの畝の除草では、何も考えずに黙々と作業ができ、私はこの時間がとても好きだなと思った。そして、6時半ごろに作業が終わる。全身筋肉痛になりながらも、帰り道に軽トラから見る夕日に、生きている感覚を覚えた。今までこんな感覚を知らなかったし、夕日を見て何か思うこともなかった。

 

一日が早く感じ、それと同時に濃密にも感じられた。土に触れるということで、こんなにも人の感性は研ぎ澄まされ、過ごす時間の質が違うことに驚いた。農場長の梅本さんの夢は、「オーガニックスタンダード」有機野菜をみんなが当たり前に食べている世の中を創ることだ。その夢を、私もともに追いたいと思った。

 

そして、愛農学園で生活するうえで、心にとめておきたいことがある。それは、「志高く、人間らしく生きる」ということだ。では、志高く、人間らしく生きるとは、どういうことなのか。まず、志とは、これからの人生で成し遂げようとする何かを決意する精神のことを、私は志と呼ぶ。どうすれば皆が幸福になれるかを求め続ける心とも呼べる。その志が、世のため人のためでありたいと思う。「自分が今思っていること、しようと思っていることは志が高いことなのか」と常に自分に問うていく、もう一人の自分を持つことが大切だと思う。例えば、勉強をなまけようとする心や、授業中寝てしまおうと思う心を持つ自分に、「それは志が高いことなのか」と問いただすのだ。そんな謙虚さと、反省心を、愛農学園での3年間で習慣化していきたい。

 

では、「人間らしく」とはどういうことなのか。この世界には「らしく」がつく言葉がたくさんあるが、あなたは何らしくなりたいと思うだろうか。私がらしくなりたいと思うのは、人間だ。入学式の日、直木校長はおっしゃった。「君たちはまだ人間になりきれていない」と。私には、その意味を説明できるまでに至っていない。しかし、なんとなくわかるような気がしたのだ。人間はたくさんの欲を持つ、愚かな面も持つ。しかし、私が思うよりずっと素晴らしく、素敵な生き物だと思う。私の考える「人間らしい」とは、喜怒哀楽など、数え切れないほどの感情を持つ人のことだ。感情豊かな、人間らしい人になりたいとおもう。「志高く、人間らしく生きる」とは、どういうことなのかを探求し、実行していくことを、この愛農学園で農業を通してできればと思う。

 

「隣人の命の糧を生産する農業は、隣人愛の表れであり、隣人を自分のことのように愛することが人類究極の目的である」と建学の精神に記されている。目には見えないけれど必ずある何かを感じる食べ物を作れる農業者になりたい。その何かを人は愛と呼ぶのではないだろうか。地球上に生きることを許された生物として、何か地球に恩返しをしていきたい。私にとって、その方法は、農業だと思っている。

 

私は農業が大好きだ。志高く、人間らしく生きていきたい。愛農学園での3年間、ひたすら学び、ひたすら汗を流し、謙虚に、たくましく、「最高」なんて言葉では片づけられないような毎日を送りたい。

END