3 月 2 日
天国の花
海沿いの村を私は散歩し、
ある農家の庭に咲く水仙の花をみとめて
足をとどめました。
肉付きの豊かな水々しい青葉につつまれ、
淡青色のまっすぐなくきの上に、
小さい黄色のかんむりを真中につけて、
白い気高い花が揺れていました。
世のチリに染まず清らかに、
しかし取りすました孤高(ここう)というのでもなく、
たくさんの青い葉にかこまれて多くの白い花が、
南国のあたたかい冬の陽を受けていました。
それは天から降りたみどり子が、
田舎の人々の間に生まれたような花です。
天から下りたその場所は王宮でなく、
陽当たりのよい農家の庭でした。
単純で素朴な平民たちは手をふって、
彼らの間に生まれた神の子を祝福しました。
天から地に降りた御使(みつかい)たちは、
白い衣をそよ風になびかせ、
小さい黄色のかんむりをゆらゆらさせて、
「高い所には栄光が神に、
地には平和が、人には喜びありますように」と、
たのしさ、顔にあふれて歌っていました。 ・・・ 
単純で気高く、あかるくて水々しいこの花は、
幼い私の友でした。



上へ前へ次へ