海沿いの村を私は散歩し、 ある農家の庭に咲く水仙の花をみとめて 足をとどめました。 肉付きの豊かな水々しい青葉につつまれ、 淡青色のまっすぐなくきの上に、 小さい黄色のかんむりを真中につけて、 白い気高い花が揺れていました。 世のチリに染まず清らかに、 しかし取りすました孤高(ここう)というのでもなく、 たくさんの青い葉にかこまれて多くの白い花が、 南国のあたたかい冬の陽を受けていました。 それは天から降りたみどり子が、 田舎の人々の間に生まれたような花です。 天から下りたその場所は王宮でなく、 陽当たりのよい農家の庭でした。 単純で素朴な平民たちは手をふって、 彼らの間に生まれた神の子を祝福しました。 天から地に降りた御使(みつかい)たちは、 白い衣をそよ風になびかせ、 小さい黄色のかんむりをゆらゆらさせて、 「高い所には栄光が神に、 地には平和が、人には喜びありますように」と、 たのしさ、顔にあふれて歌っていました。 ・・・ 単純で気高く、あかるくて水々しいこの花は、 幼い私の友でした。