人生の旅路の半ばで、人生の半ば
正しい道を失い、
暗い森の中に自分を見出します。(ダンテ「神曲」地獄篇第1歌)
すでに人生の経験をし、人生の旅路半ばに達し、いろんな事に、家庭問題においても学問の問題においても政治の問題においても、出会ってみると、もはや罪という問題はただ感情的に感傷的にこれをながめたり、あるいはふけったり、味わったりする問題でなくなって、非常に現実的な強さをもった力をもって私たちの首筋(くびすじ)を押さえてしまいます。そこで自分の人生が暗くなり、これではいけない、自分の生き方についての根本的な反省をしなければならないという事になるのです。 ・・・ 人生の実生活にぶつかってみて初めて罪の自覚が観念的な、あるいは感情的な問題でなしに、真に死活問題となって自分に迫ってくるのです。この「神曲」の初めの三行の中に人生のリアリティ(現実)、人間のとしての無限の悲哀(ひあい)がたたえられています。これを夜静かな時に口ずさんでみると、人類の悲哀が自分を圧倒することを感じます。