イエスはただペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて高い山に登りました。すると彼らの目の前でイエスの姿が変わり、衣服は真っ白く輝きました。そしてエリヤとモーセが現れ、イエスと語り合いました。 ・・・ やがて雲がわき起こり弟子たちをおおうとその中から声がひびきました、「これは私の愛する子です。これに聞きなさい」。神の声
イエスの変容(へんよう)とモーセ、エリヤの物語とこれらすべての出来事を結ぶものとして「これは私の愛する子です」との神の声がひびいたのです。これはかつてイエスがヨルダン川で洗礼を受けたときに聞こえたのと同じ言葉です。その時は「私はあなたを喜びます」とあり、主としてイエス自身に神の子たる自覚を与えられたものでありましたが(マルコ 1:11)、今度は「あなたたちはこれに聞きなさい」とあり、イエスの自覚を固めるとともに弟子たちの信仰を確かにされたのです。十字架の死を前にして、イエスの神の子としての自覚はもう動きません。今最も必要なのは、弟子たちの信仰の確立です。近く現実にイエスが十字架にかけられる時が来ても、弟子たちの信仰がそのために動揺しないように、彼らの足を強くしておかなければなりません。そのために、このヘルモンの霊峰(れいほう)における神秘の庭に彼らを伴ったのです。
こうしてヘルモン山頂に神の国の栄光を見た事は、イエス自身にとっても弟子たちにとっても十字架を克服する力の秘密の出所でありました。