信仰は希望のみなもとで、まだ見ていない事実の確かな証です。理想と信仰
理想とは神においてすでに実現している聖意(みこころ)で、地上におけるその完き実現がまだおおわれているものです。神においてすでに成立いている経綸(けいりん)の終極(しゅうきょく)で、地上におけるその成就がなお進行中のものです。
理想は事物の本質です。従ってそれは現象の彼方に存在します。しかしながらそれは現象より遊離して空虚に存在する幻想(げんそう)ではなく、かえって現象の基底に横たわり、現象の中に象徴化(しょうちょうか)されている本質です。
理想は歴史の将来です。従ってそれは現在の彼方に存在します。しかしながらそれは現在より切り離されて無関係に存在する空想ではなく、むしろ現在の底に流れ、現在を歴史の終極に向かって推進させる力です。
このように理想を認識する人間の力が信仰です。信仰は歴史の終極を現在とし、事物の本体を現実とする力であり、この洞察力によって人は理想、言いかえれば神の聖意における既定の計画と経綸(けいりん)を知り得るのです。すなわち信仰によって神を知るのです。この意味において信仰は知識です。