神の国は見られる形では来ません。また「見なさい、ここにあります」「あそこにあります」と言うものでもありません。神の国は実にあなたたちの内にあります。

（ルカ 17:20-21）

　神の国はここにありあそこにありと言うものでなく、神を信じる人の心の中にあります。キリストに救われた人の心に宿る自由と平和こそ、まさしく神の国です。この意味において神の国はすでに現在、キリストを信じる人の心にあります。

　しかし神の国はただ個人の心に宿る主観的な喜びだけではありません。それはイエスを信じる人の信仰の交わりの中にあります。イエスを信じる人の霊交が神の国であり、この意味においてもまた神の国はすでに現世に存在するのです。

　しかしながら、もし神の国が現在の私たちの心の中、あるいは交わりの中にあるだけのものならば、それはいかに甲斐（かい）のない不完全なものでしょうか。私たちの心の自由はしばしば失われ、私たちの心の平安は度々乱されます。私たちはあわれむべき精神病者一人をすら真に愛する事が出来ず、ましてこれを助ける事においては全くの無力を嘆かざるを得ません。

　このゆえに身体の復活と世界の完成を信じる来世の信仰においてのみ、私たちは神の国の希望を確保する事が出来るのです。

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