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2022年度憲法記念講演会

去る5月9日に憲法記念講演会が行われました。今年のゲストは水野スウさん。金沢から遠路はるばる来校下さいました。

スウさんは憲法と同じ年。金沢で39年間紅茶の時間という‘誰でも来てもいい無料の喫茶‘を自宅で開かれています。そこから様々なご縁がありチェルノブイリ原発や憲法、それに平和へ展開していき、現在は「わたしとあなたの・けんぽうBOOK」「たいわけんぽうBOOK」のほか「ほめ言葉のシャワー」などの著書も出版されています。詳細は娘さんの運営されていウェブショップへ mai works WEBSHOP – てのひらブックと紙モノ雑貨 (fc2.com)

さて、いよいよ講演。

まずなんで紅茶の時間を始めたか。そこからどうやって憲法に繋がったか。家族の話も交えてフラットに話して頂きました。その中で印象的だったのは「Be」と「Do」の話。「Be」は「ある」。「Do」は「する」。個人は何をするかで尊重されるのではなく、まずあることが尊重される。つまり「Be」を土台にして「Do」がある。社会は「Do」を求めるけれども、社会の土台は「Be」である、ということ。

実は個人を尊重する内容は憲法の13条にあります。全文は以下のとおり

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

これをスウさんの娘さんはこう訳します

「わたしは、ほかの誰ともとりかえがきかない わたしは、幸せを追い求めていい わたしは わたしを大切と思っていい あなたも あなたを大切と思っていい その大切さは 行ったり来たり でないと平和は成り立たない」

スウさんお手製の資料①
スウさんお手製の資料②

話は12条に移ります。スウさんは12条が13条とセットだと言います。12条の全文は以下のとおり

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

つまり憲法に書いてあることは理想である。でもその理想と現実を埋めるために僕らは努力をする必要があるということ。憲法は天皇・国務大臣・国会議員。裁判官・公務員といった人たちが守る義務があります。でも12条は義務を課す僕ら側の努力が必要。そのために憲法は後押しするよと言っている。

スウさんは決して専門的な物言いをしません。ましてやアンチ〇〇のような立場でもない。それは「わからないことをわかったふりしない」こと、そして相手の話を聞くことをモットーにしているから。その姿勢は著書にも共通しています。わかることを分かるように伝える。その姿勢は等身大であると感じます。

最後にスウさんはガンジーの言葉を引用しました。

あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。それをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである

そしてこのように続けます。

「今色んな事が起きている。それに明確な答えを出すことはできない。でも国家が行こうとする方向や圧力、雰囲気によって自分の考え方が変わるのは国家による自分の変化。自分は9条にある「非戦」の決意をなにより大切にしたい。自分の向かう先が平和なのかどうか。それが判断の基準です。」

以前愛農に来てくれた内田樹さんが「憲法の空語を埋める」という話をされたことがあります。それはとりもなおさず、憲法の持つ理想と現実の間(空語)を埋め続ける作業ではないか。憲法に質量を持たせる行為ではないかと思います。

書籍も沢山プレゼントしてくれました

スウさんは「今の憲法には権利に関する条項が多いのは、それが当たり前じゃなかった時代を経験したから」と言います。そういわれてみれば憲法には権利条項がたくさんある。このことにハッとさせられました。

憲法は権利を満たされた人が、その権力を行使するために作られたのではなく、多くの権利を失った人たちが、それを取り戻していくために作られたものであるということ。

そう思って憲法の前文を読むと、力強さと重みを感じることができました。

世の中には人が必死に、命を削るようにして残した言葉や文章があります。憲法もそうなのかもしれません。今までの教科書的な憲法ではなく、今なお鼓動を続ける文章として憲法を感じることができた、素敵な講演会でした。

スウさんありがとうございました。

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